【連載】大江千里の50をハタチと数えたら #7

2017年05月13日
大江千里コラム_#7_423

The Garden Christmas
子供の頃のクリスマスのいい話。

NYのビレッジに僕の大好きな本屋さんがある。店内を抜けると裏庭が広がり、そこにベンチがある。座って好きな本が読めるのだ。電子書籍の時代になっても本屋が健在なのが頼もしい。

そういえば人生で擦り切れるほど読んだ本が7冊ある。小学生の頃毎年クリスマスに父から買ってもらった、ナルニア国物語全7巻。最初は小学校2年、「ライオンと魔女」。4人の兄弟が樟脳(しょうのう)臭いクローゼットから、アスランというライオンが治める国ナルニアへ迷い込み大活躍する。悪い魔女によって冬の時代にされたナルニアを取り戻すために、勇気を持って戦う話。やがて4人の兄弟はその国で王と女王になる。ひょんなきっかけでまた実際の世界へ戻ると、時間が5〜6分しか経っていなかったという話。しかしナルニアではまた騒動が起こる。寄宿舎へ向かう駅のホームから「カスピアン王子の角笛」に呼び戻され、再びナルニアを救うため彼らはその国へ。「さいごの戦い」まで数百年にもわたる間、ナルニアの危機を救いに何度も2つの世界を行ったり来たりする、スリルと冒険と勇敢な精神、ユーモアに満ちた物語に、子供ながら心が震えたものだ。

父は毎年1冊ずつクリスマスに買い与えてくれた。それが中学1年まで続いた。カトリックの我が家はイブに教会に行く。帰宅するとサンタが本を持ってやってくるはずなので、眠い目をこすり待っている。ところが待ちきれず眠りにつく。気がつくとクリスマスの朝、枕元にナルニアの新しい巻が1冊置いてあるのだ。やがてサンタは父であることを知り、ナルニアは7年間で終わったが、その間はクリスマスにもらう1冊の本が楽しみで、1年中擦り切れるほど何度も何度も読んだものだ。

空想の庭。そんな習慣が最近はすっかり無くなった。久しぶりにビレッジの本屋を訪れて庭のベンチに座ると、あの頃のワクワクがよみがえる。

クラシック好きの父は、僕がポップのシンガーソングライターになったことを長い間認めてくれてなかった。アメリカに渡る今から10年ほど前に実家に帰ると、「やることは全てやったろ?行きなさい」と拍子抜けなくらいあっけなく背中を押してくれた。ナルニアの後からいつしか長い反抗期が続いていたが、何十年ぶりかでナルニアの頃と同じ気持ちで再び父に心が繋がった。

アメリカで生活するのは、どこかナルニア国に迷い込んだあの頃の主人公たちに重なる部分がある。冒険とスリル。志と溢れるユーモア。実家へ帰ると、父が赤ワインのボトルを開けて酌み交わすのを楽しみに待っていてくれる。「お前がアメリカに行く前、大好きだったぶどう酒だ。買い揃えてある」。ただ困ったことにそれがボジョレーヌーボーである点だ。毎年開ける同じワインが既に7年を超えてきた。こればかりは繰り返し飲むのはいかがなものか。(笑)

ナルニア国物語:「ライオンと魔女」「カスピアン王子の角笛」「朝びらき丸東の海へ」「銀のいす」「馬と少年」「魔術師のおい」「さいごの戦い」

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<大江千里(Senri Oe)>
47歳でジャズの音楽大学に入学、51歳で卒業、その年に自身のジャズレーベルを設立して、ニューヨークのブルックリンを拠点に4枚のアルバムをリリース。精力的に世界をツアーするピアニスト大江千里が中西部にやって来る。
「50をハタチと数えたら」は、50歳−30=20歳という筆者の頭の変換図式で、現在56歳-30=26歳という。2度目の「大青春」を泣き笑い謳歌する筆者がANGLE info読者に独占お送りする「抱腹絶倒」で「ほろり」とする「いい話」を10話お送りします。

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